同人声優さんの収録データの原価ってどのくらい?単価はどう決めてるの?
同人声優さんの依頼単価って、本当にそれぞれですよね!1文字1円だったり、2円だったり、5円だったり、10円だったり…
そこで結構言われるのが、「声優は声を使って仕事してるんだから、原価0円でしょ?もうちょっと安くしてよ」なーんてこと。悲しい…(;ω;` )
だけど、そう思っちゃうのも仕方がないのかな、とも思うのです。なぜなら、依頼者さまは当然、実際収録データを納品するに至るまでに、何が必要なのかを知らないから…!!
ということで、この記事では、自分なりの同人声優さんの収録データの原価について、考えていこうと思います♪
目次
原価ってそもそも何?
一般的には商品を作るためにかかった全ての費用のことを原価と呼びます(`・ω・´)
げん か [1] 【原価・元価】
原価、というと「水の原価は実質ゼロだからペットボトルの水はボッタクリ」と揶揄(やゆ)されたりしますが、
・水を採取するための設備費・人件費、水を運ぶための運送費
・水をペットボトルに詰める設備費・人件費
・ペットボトルを店舗に運ぶための運送費
と一例ですが、これら以外にも様々な費用がかかっていることが想像できますよね。
ものすごーく深く探れば、”水を採取するための設備を製造する会社にあるタイムカードに印刷するためのインクを製造している会社の事務のパートさんのお給料”のコストも間接的に入っているはずです。
原価はつまり「コスト」と言い換えることができます。
では、同人声優さんの収録データの原価には、どんなものが含まれているのでしょうか?ペットボトルの水だって、いろいろなコストがかかっているのですから、物理的な形のないデータもコストがかかっているはずです。
同人声優さんの収録データの原価内訳
- 人件費
- 設備費
- 通信費
- 光熱費
- 技術料
このあたりが、声優さんの収録データの原価にあたるのではないでしょうか。それでは、もっと詳しく勘定科目ごとに中身を見てみましょう!
同人声優さんの人件費の考え方
実際に収録データを完成させるまでには、収録・データ編集・業務連絡という労働が発生します。この部分が声優さんの人件費にあたると私は考えています。私の場合は、1hあたりの労働が1000円を切らないように1文字あたりの単価を決めています。
ただ収録をしている時の時給1000円換算ではなく、依頼をお受けする際の見積もりやその連絡、収録後に簡易に行うノイズ除去といったデータ編集などなど、納品までにかかる全ての時間をみています。
同人声優さんに限らず、いくら制作活動が好きでやっていても、ずっーと赤字続きでは、作品制作にかかるコストをまかなうために、ある程度は時間をお給料が貰える仕事やバイトに充てることになりますよね。
そうなると、制作活動に携われる時間が減り、お金と時間の兼ね合いで最終的には継続できなくなり辞めざるをえなくなる・・・ということはイメージしやすいのではないでしょうか?
同人声優さんの設備費の考え方
収録するためには最低限、パソコン、マイク、ヘッドフォンを必要とします。より良い音質で録ろうとすればするほど、オーディオインターフェース、アンプ、リフレクションフィルター、ポップガード、防音室、有料のDTMソフトなど、さらに様々な機材が必要です。
また、これらは電子機器ですから、使用頻度が高まるほど故障の時期も早まります。いわゆる消耗品です。使うたびに機器を消費していってるイメージです。機材の調子が悪くなるとダイレクトに音質に影響しますから、定期的に買い換えなければならないんです。
最低限の構成で3年毎に買い替えの前提で例えると、パソコン(10万)+マイク(3万)+ヘッドフォン(1万)+オーディオインターフェイス(2.5万)+DTMソフトAdobe Audition(月額2480円)=約25万円 は定期的にかかることになります。
音質が良い声優さんであればあるほど、こういった見えない部分により多くのお金がかかっていることを知っておいてくださると、兎月りりむ。はとっても嬉しいです!
同人声優さんの通信費の考え方
台本を受け取るにも収録データを納品するにもインターネット環境が必要ですから、やはり通信費も原価に含まれているとお考えください。これに関しては他のお仕事に関しても言えることですね…!
これは自宅でされていればインターネット定額で追加の支出にはならないと思いますが、オフィスをレンタルされている場合にはかかってくる項目です。
光熱費
収録機材たちやパソコンを稼働させるには、電気が当然必要です。特にデータ編集はマシンパワーを要するので、本当にうちのパソコンちゃんはよく電気を食べる…!もりもり食べる…!空調も整えておかないと機材たちのコンディションを保てませんから、エアコンとかも結構使います。
電気代はインターネットのように定額制ではないので、一般的なご家庭よりも、それなりに多くかかっていると思います。発送電分離のおかげで、安い電力会社を選べるようになって助かっています。
技術料
一見0円に見える技術料。実はそうでもないんです…。どこまでが技術料にあたるのか、ちょっと想像してみてください。プロの声優さんの例で考えてみましょう。
学費
最近は、プロの声優さんになるルートとしては、専門学校等にまず入学するという手段がメジャーですよね。卒業するまでに、声優としてお仕事をするための基礎を身に着けるわけです。
専門学校ですから、当然莫大な学費(年100万-150万×2,3年)がかかってきます。私はこれも、回収して当然の技術料の一部だと考えます。
経験
いわゆる大手の声優さんになればなるほど、長年の業務の積み重ねがあります。スムーズに収録し、納品するに至る技術だって、経験を積まなければなかなか難しいのです。演技力も、一朝一夕で身につくものではありません。
演者さんの演技をする以外の部分の様々な経験も、必要になってくるのです。きっとメジャーな声優さんは、今でも演技にまつわる勉強をなさっていると思います。その積み重ねがあってこそ、あの素晴らしい演技ができているのです。熟練された業務経験も、技術料のうちと言えると思います。
特殊技能
声優さんといえば、やはり特徴的で素敵な声質。持って生まれた素敵な声を、さらに素敵に魅せる特殊な技術をもってして、皆様に声をお届けしています。誰でもオリンピック選手にはなれないですよね。
同じことが声優さんにも言えると思います。誰でもやれる、というわけではないと思うのです。考え方は人それぞれですが、私はそんな稀有な才能に価値がない、とはどうしても考えられないのです。
よって、生まれ持った特殊な声とそれを活かす技術、これらも原価に加えてよいものと考えます。
まとめ
同人声優さんの収録データにまつわる原価の考え方、いかがでしたでしょうか?今回紹介したのはあくまで兎月りりむ。の考え方なので、絶対に正解である、と言うつもりはないです。本当に人それぞれ原価については捉え方が異なると思います。
また、同人声優さんの依頼単価の決め方も本当に様々です。本業でやってる方、副業でやってる方、安くてもいいから仕事が欲しい方、追加の副収入が欲しいから一時的に安価で請け負う、スケジュールがタイト故に高単価であれば多少の無理をしてでも収録を請け負う方、効率よく生活のために稼ぎたいから高単価に、などなど…。
お金が発生する以上ビジネスですから、単価や仕事を受ける条件を取引先やスケジュール、納期によって変更することは、私は悪ではないと思います。柔軟に、自由に決めて然るべきとすら思います。
そもそも、値段を声優さん同士で相談して統一してしまったら、それこそカルテルのようなものに…。
高いなあ、安いなあ、と感じるのはもちろん自由です。でも、声優さんもきちんとわけあって単価を設定しているんですよー、ということを知っておいてくれると嬉しいです。値切り交渉をしたらいけない、ということでもないです。
経済学でいえば、各々コストがあるなか、需要と供給という市場原理に従って価格(単価)が決まり、取引が成立していきます。需要<供給であれば、コストを切り詰めて値下げし、需要>供給であれば、値上げして販売しますよね。
例えば1文字単価が100円であっても、依頼者が1000人いて同人声優が1人であれば、取引は成立するのではないでしょうか?逆に、依頼者が1人で同人声優が1000人であれば超価格競争の世界に突入するはず…。
結局のところ、お互い納得のいく条件で取引すれば良いのです。とはいえ相手は心のある人間ですから、心無い発言をしないよう配慮して、楽しく制作活動をしましょうね♪